嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

入試は怖い。

ご無沙汰をしております。忙しすぎて、ブログを書く時間がないので、さらっと書ける受験勉強のことを書きたいと思います(というのも、学習塾としてどうかと思いますが)。

大学受験の点数開示ってありますよね。透明性を確保する意味でもとてもよい制度だと思いますし、特に東大は不合格の翌日くらいには自分の科目ごとの点数の詳細がわかるので、とてもよいと思っています。この点は、是非他の大学にも見習っていただいて、どの国公立大学でも不合格の翌日くらいには点数開示をしていただきたいものです。また、私立大学は点数開示制度がまちまちなので、そもそも(補欠などの関係上)迅速でなくてもいいので、点数開示をしていただきたい。それは高い受験料を払って受けてくれる受験生にとって最低限の責務であると思います。

しかし、この素晴らしい点数開示という制度はまた、やっかいな問題も生み出してしまいます。たとえば東大を例にとれば今年10点差ぐらいで惜しくも落ちてしまったとき、この結果は受験生を非常に緩ませるわけです。「この10点を1年で埋めればいいのだから、簡単だ!」などと(口には出さないでも)思ってしまうことが多いのではないでしょうか。また、そのような成績を予備校に持って行くと「この子は東大合格実績を稼げる受験生だ!」と判断されて、授業料がタダになったり半額になったりなどの特典もあるわけで、このことがさらに受験生にとっては「あと1年で10点を埋めればよい!」的な甘えに拍車をかけ、「じゃあ受験勉強はほどほどにして読書しようかな。」とか「大学の勉強を先取りしながら受験勉強をしようかな。」などというスタンスの受験勉強になってしまったりもしがちです。

しかし、断言できるのは、そのような受験生はまず確実に次の年の受験に失敗する、ということです。なぜなら、それらの受験生はその1回のテスト(自分が不合格だったもののしかし惜しい点だった本番の受験)が「まぐれ」であることをしらないからです。

もちろん、完全なまぐれでたとえば東大入試で点数はとれません。それなりの力があるからこそ、その点数がとれているわけです。しかし、それはあくまでその一回に限った結果であり、次の年に受けるときには現役生のときには予想もしなかったようなミスが本番で出てしまうかもしれないわけです。さらには「当たって砕けろ!」的な「受かればもうけもの」という考えで受けるのと、「今年で決めなければならない!」というプレッシャーを背負うのとでは当然自分の思考力のパフォーマンスも変わってきます。さらに、浪人生は「すべり止め」を受けなければいけません。東大受験生だとすれば、早慶をすべり止めで受けるとして、それらのテストの対策をある程度しなければならない以上、現役生のときのように東大だけの対策をする時間は直前期に減ってしまいます。

さらに。入試問題の難易度があります。比較的簡単な問題であれば、それらの悪条件を考慮してもまだ点数は安定しやすいでしょう。しかし、難しい入試問題にとりくまねばならない入試であればあるほど、点数は実力だけでなくその日の出来に左右されやすくなります。東大の入試問題の難易度のぶれに左右されないほどの実力を付けていない限り、ちょっとしたミスや思い違いが命取りになるでしょう。そして、ここまで鍛え上げることが難しいわけです。たとえば東大に合格する層の何%が、そこまで実力をつけた上で合格したといえるのでしょうか。

いくら現役生の時よりは勉強を積んできたとしても、これらの悪条件を鑑みて、それでも「あと10点を1年で埋めれば良い」と安心していられるでしょうか。浪人生は、点数開示による点数や、模試のA判定などを信じることなく、鍛え抜いてください。ぶっちぎりで合格できる力を付けなくては、うからない。そのように自分に言い聞かせて、鍛えていかねばなりません。

「現役でここまでこれたのだから、まあ、一年やれば受かるだろ」という精神的態度は、僕には願望を現実とすり替える幼稚な態度であると思えます。その願望が成就し得ない外部のfactorがいくらでもあると思うからです。もちろん、厳しい受験勉強のさなかにいる受験生が、その自らの願望の頼りなさに自ら気づけるのであれば、本当に素晴らしいと思いますが、なかなかそれは難しいのでしょう。だからこそ、受験生を支える立場にいる大人達は、「君なら大丈夫!」的な無責任なことを言う暇があるなら、1つでも2つでもその子が100%落ちないために何が必要か、何が今のところ足りていないかを必死に探していかねばなりません。

帰納的な考え方自体が、決して何の保証にもならないこと自体はラッセルの有名なたとえ(「毎朝、決まった時間にえさをもらえると思っていた牛は、ある朝、食用肉にするために出荷されてしまった。」)の通りです。前年度の入試での点数も、数々の模試でのA判定も、決してその受験生の合格を保証するものではありません。その厳しい現実を直視できるように、塾生達を徹底的に鍛えていきたいと思います。彼ら、彼女らがやがて、受験などよりもっと厳しいこの世界の現実をも直視していけるように、という思いを込めてです。

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