fc2ブログ

嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

文学の残酷性について1

 文学とは、またそう大上段にふりかぶらなくても、小説とは本当に残酷なものです。それは、いわゆる数学や物理学のように、「分からない人には分からない。」(とはつまり、「分かるための大変な量の努力をしていない」ということでもありますが)という意味で残酷なのではありません。むしろ逆で、「分かっていなくても、誰にでも語れる。」というシニカルな残酷さがあります。だからこそ、その小説の作者の意図が分かっていない人々が、自らが分かっていない事を分かっているかのように語る、というグロテスクな事態も多々あるわけです。
 そしてさらに残酷なのは、その小説の意図(その小説でつたえたかったもの)をわかろうとどのように努力しても、わかりようがない人々もまたいる、ということです。そこで描かれたある意味個別的な感覚や感情を、経験していない人には分かるわけがありません。こここそが、非常に残酷なところです。どんなにその筆者に惚れ込み、その作品を網羅するように読もうと、その読者がその筆者のもつ感覚や感情と通じるものをもたないのであれば、決してそれはその筆者の書く作品の理解にはつながりません。そこでは、努力が一切通用しないわけです。人間の精神に私たちが想定している「個性」がある以上、必ずそうならざるをえない。その恐ろしさについて、また続きを書きたいと思います。

(続く)
関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加
PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

こんにちは!!

あけまして
     おめでとうございますv-354

『楽なほうに、流れるな』
いいですねぇ!!

なんだか、今回のはずば抜けて読みやすかったです!!

私はこれから(5日から)スキーなので、8日まで塾に行かれません。
ご了承下さい。。。
では、また。

とまと | URL | 2011-01-03(Mon)18:36 [編集]


Re: こんにちは!!

とまとさん、いつもコメント有り難うございます。

「楽な方に流されるな。」ではなく、「楽な方に流れるな。」であるところは、しっかり分かっていただけたでしょうか。「楽な方に流されてしまって…」と言うとき、その人はあまり自分の責任を感じていないものです。そういうときは、「楽な方に流れてしまって…」と言い直してみると、「あ、自分がいけないのかも!」という発見が出来るのではないでしょうか。

スキー、是非楽しんできてください。それではまた。

柳原浩紀 | URL | 2011-01-07(Fri)13:23 [編集]


なるほど!!
違いですね!!e-254

中学で、自分に責任を問う事が多くなりそうですe-68

とまと | URL | 2011-01-10(Mon)15:50 [編集]