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嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

「勉強の仕方がわからない」ときの、たった一つの解決策。

たまには教育の話題も書かないと、学習塾であることを忘れられてしまいます!!(僕もしばしば忘れがちです。)

さて、学習塾に親御さんから一番寄せられるリクエストとしては、「この子は効率のよい勉強の仕方がわかっていないから、それを教えてほしい!」というものです。しかし、このリクエストは往々にして、的を外していると思っています。もちろんたとえば、「この子は1日12時間必死に勉強しているのにも関わらず、全く力がつかないんだ!」というレアケースもあるのかもしれませんが、少なくとも僕はここまで25年間教えてきて、そのような生徒には出会ったことがありません。この親御さんからのリクエストの前提として「少なくともうちの子は人並くらいには勉強しているはずなのに、勉強ができない。ということは勉強のやり方がわかっていないのでは!」という発想があるのだとは思うのですが、これは根本的に誤っていると今のところ思っています。

こうしたリクエストに対し、こちらが効果的な解決策として提示するのは唯一つです。「勉強時間を増やしましょう!」ということですね。しかし、この提案をすると、嫌な顔をされることが多いのです。「いやいや、そこを短時間でうまくやる方法を身につけるために高い金を払ってるんだろ!」とまで露骨な態度をとる親御さんは少ないにせよ、まるでこちらが無策であるかのように感じられるのでしょう。そして、勉強に困っている子たち自身も、そもそも勉強があまり好きではないがために、「勉強時間を増やすべきだ!」という解決策に対しては親御さんだけでなく、本人達も反抗する理由があります。こうして、親御さんも子供もそれぞれ違う動機から同じ主張(「短時間で力のつくうまい勉強方法教えるのが塾だろ!」)をとることで、結果、唯一の解決策である「勉強時間を増やす」という根本的取り組みからは逃げ回り、そして勉強が苦手なままで終わっていく、という残念な結果になりがちです(ちなみに、このようなリクエストをするマインドからの派生形として「オリジナルのテキストを使っている学習塾は(その効果的な方法がが入ったテキストなので)効率のよい方法を教えてくれる!逆に市販の参考書を使っている学習塾はそうじゃない!」というものもあります。これも実情を知っている側からは苦笑するしかないものでして、たとえばほとんどの高校受験塾の「オリジナルテキスト」は、教科書販売会社で売っているような業務用テキストに自社のロゴをプリントしてあるだけの「オリジナル風」でしかありません。大学受験の塾や予備校になると、さすがにもうちょっと「オリジナルテキスト」率が上がるとは思いますが、それでも市販の参考書では賄えないほどの良質、あるいは高レベルのオリジナルテキストがあるところとなると、だいぶ少ないのではないかと思います。)。

しかし、子どもたちが「勉強の仕方がわからない」のには主に、「勉強を自発的にやっていない」ことと「そもそも勉強量が足りない」という2つの理由があります。前者はたとえ長い時間「勉強している」「机に向かっている」としても親御さんやその他の何らかの強制力によってそうしているだけであり、本人が勉強の内容について頭も心も働かせていない状態である、ということです。このような状況ではそもそも「長い時間勉強をしている」のではなく、「長い時間勉強をするフリをしている」だけであるので、それは力が付きません。また、後者の「そもそも勉強量が足りない」は、「他の子と同じくらいはやっている!」という理由から、このくらいの勉強時間で力がつかないのは方法が悪い!という結論になりがちなのですが、実際一人一人で同じレベルに達するまでに必要な勉強時間や量は本当に千差万別です。誰かと比べてどうこう、が言えるわけがないのですが、それを勉強を苦手な子とその親御さんほどに、「一般的な量や時間はやっている!」という主張をされます。

そして、この両者を解決する魔法(というには大変ですが)のような方法が、「勉強時間を長くする」なのです。

もちろん、誰かが強制して長くしても勉強しているフリが長くなるだけです。そこに関しては、その勉強が今どれくらい必要か、そもそも学校の勉強さえできていれば受験で通用するのか、あるいは勉強以外の他のことに割くべき時間を考えても受験勉強にある程度時間をかけることは後の人生においてかなりハイリターンであること、など、様々な見地から勉強をその子自身が取り組むモチベーションをもてるように、ということを話し合っていく必要があります。かなり早い段階から子どもたちは自分でいろいろ考えています。だからこそ、子どもたちが勉強に真剣に取り組めないのは、必ず理由のあることなので、子どもたちに無理やり(やる意味や目的を考えさせることなく)勉強をやらせ続けることができる、というのが親や教師の手抜きでしかありません。そこをしっかり話し合っていく必要があります。

といった諸々をしっかりと整えていっては勉強時間を長くしていけばいくほどに、子どもたちにとって「勉強して成果がでない」ということが、親や教師が自分について勝手に悩んでいる問題ではなく、「自分の問題」となります。そうなればなるほどに、自発的に様々な試行錯誤をするようになり、そしてどのように勉強していけば自分の力がつくかを模索する習慣ができてきます。その試行錯誤の習慣をつけていくためにも、「(自発的に)長い時間勉強をする」ことが大切です。もちろん、そこでより効果的な方法を子どもたちが自身だけで作っていけるかといえば、それは難しいでしょう。そこで初めて、教師が役割を果たす準備ができてくることになります。
(ここに関しては「短い時間でも試行錯誤させればいいじゃん!」という反論もあるでしょう。しかし、短い時間でも自分で試行錯誤をして最適な方法を見つけられる子、というのはそもそも勉強が得意な子です。長い時間勉強もしていないのに「勉強の仕方がわからないだけで、わかれば短時間の勉強で力がつくはずだ!」と考えている時点で、それは自分からは試行錯誤をあまりしていない、勉強が苦手な子であるのです)

ということを踏まえれば、「勉強の方法がわかっていない!」という状況に対する最善の提案は「(自発的な)勉強時間を増やす」ということです。さて、それをどうやってやっていくのか、という実践面での様々な工夫が極めて難しいわけですが、しかし、この難しいことを乗り越えずして力をつける、というのは根本的には何も解決になっていません。もちろん、「うちの塾ならうまい方法教えるんで、短時間の勉強で成績アップできますよ!!」という惹句はこの業界、溢れんばかりにあるわけですが、それはやはり(もちろんそれが必要なタイミングや状況はあるとしても)生徒たちにとって、長期的には本質的な解決に繋がらないことの方が多いと思っています。どこかでやはり、(対象は勉強でないとしても)「一つのことに長時間真剣に取り組む」ことが人生においては、必ず必要になるからです。だからこそ、「(自発的に)長い時間勉強できるようにする」というattitudeを塾生の中に、何とか鍛え、育んでいきたいと思っています。
(これには僕自身の苦い思いもあります。「長時間、自発的に努力できる」人間には、どのような「天才」も結局はかなわない、という厳然たる事実があるからです。それはたとえば将棋界での永瀬二冠と佐々木勇気七段の関係性を見たってそうでしょう(もちろん、佐々木さんもまたこの事実から奮起されて、今は努力をされているはずです)。自分や自分の子供が(さして努力を必要としない)「天才」であることは、望んでも得られないものであるだけでなく、そもそも望みが叶ったとしても非常に脆弱な強みでしかありません。そのような「天才性」のみで一生を逃げ切れるほどの天才など、まず存在しません。だからこそ、私達は努力をすることを覚えなければならないのです。その事実を子どもたちから隠して、お金を得るため、あるいは自身が面倒を避けるために、その場しのぎだけを伝えて、努力の必要性を伝えない全ての大人達を僕は軽蔑します。)

そして、そのように自発的な勉強時間を増やしていければいけるほどに、「質より量」ではなく、量が質に転化してくる、ということもまた感じています。

そのためにはやはり、家庭教師や予備校講師では難しく、長時間勉強できる場を作らねばならない、というのが僕が嚮心塾を始めたきっかけでした。このような形式の塾が、どこまで生き延びられるのかはわかりませんが、何とか細々と続けていけるように頑張っていきたいと思います。
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