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嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

教育はサービス業か。(その1)

新年度の準備でバタバタと忙しい毎日で、少し間が空いてしまいました。

さて、教育はサービス業であるのか、という問いですが、これはもちろん「サービス業」という言葉の定義に依るのでしょう。ただ、「個別指導塾」という看板を掲げているところだと(これを嚮心塾も掲げているわけですが)、主にサービス業的な側面、つまり顧客満足度のみを重視する、ということが多いように思います。

というと、「いやいや、成績を上げることが塾の目標なのだから、結局は生徒に力をつけられているかどうかが顧客満足度につながるんでしょう?」と思われるかもしれませんが、教育というのは本人の努力がどうしても大きな要素であり、かつ
個別指導塾に通うお子さんというのは基本的に勉強にそれほど意欲をもって取り組まない、または、意欲はあるとしても方法がわかっていない子どもたちです。これらの子たちを抱えて「成績が上がった!」という結果で顧客満足度を高めようとしても教える側としては極めて難しくなります。労力に見合う成果を得られることは少ない分、この方向で努力するのはまだ教育という行為自体に使命感を感じて取り組む、奇特な若い大学生のみになるでしょう。

その中で顧客満足度を上げるにはどうしたらよいか。それは当然、「こちらはベストを尽くしている」ということが保護者の方に理解しやすい努力を保護者の方に見えるようにやっていくことになります。通ってくれている子が力がつくかどうかについては半ば諦めて、ですね。この最たるものがいわゆる「指導報告書の充実」です。保護者にとって「見える」部分
であるところに関しては徹底的に手をかけて立派なものを作ります。それこそ、個別指導の生徒に教える授業中の時間を潰してでも、「完璧な指導報告書」を作ります。そのようにして顧客満足度を上げることで、親御さんにお金を払わせ続けようとするのです。まあ、詐欺のようなものです。

ただ、この詐欺に引っかかるのはやはり「自分に見えているところだけで判断する」という親御さんの失敗でもある、と言えるでしょう。教育というのはその成果が極めて見えにくいものです。同じように「結果が出ていない!」状況であったとしても勉強の方法やモチベーション、その他はしっかりと改善し、あとは結果が出てくるのを待つだけ、という状況もあれば、このまま待ち続けても決して結果が出てくるようにならない状況もあります。しかし、親御さんに見えるのは模試の成績だったり学校の成績だったり、目に見えるものしかないからこそ、その目に見えるものが改善しないのであればどれも同じだ、となってしまいます。その結果として「親御さんの目に見えるもの」だけを体裁よく取り繕った個別指導塾に騙されてしまう、という悲劇に陥るわけです。

教育の効果を観測しようとすれば、観測の誤謬をつかれて、このように観測に対応した歪な「発達」によって教育の効果の実態が掴みにくくなってしまいます。本当に教育産業の罪は重いのですが、逆に言えば、それほどに教育というのは効果が出るまではどんな熟練の教師にも難しく、特に生徒本人のモチベーションが低いときにはそれこそ手を変え品を変え、何をやってもどうしようもないからこそ、このような歪な生存戦略をとることで発達してきた、ということもあるのかもしれません。僕はこのような個別指導塾を、否定しますし、それこそ絶滅すれば良い、とは思いますが、一方でそのような個別指導塾をのさばらせているのはやはり、生徒自身がモチベーションを失う制度であったり、モチベーションを失ってサボる我が子に届くような何かしらの言葉も用意できないままに、ただ「勉強が最低限のレベルではできる」という事実のみを用意しようとする、親御さんの歪な親心であるとも思います。

生徒本人が自分の勉強について、それをやるべき意味に気づき、それができていないことに自分で悩まねばなりません。
逆に言えば、親御さんが「自分の子供が勉強をしない、できない」ことに悩んでいるうちは、子供はあまりそれについては悩んでいないことが多い、というのが実情であると思います。(このようなとき、彼ら彼女らは親御さんの「勉強しなさい!」というリクエストに応えることに精一杯で、自分自身がそれについて考えたり悩んだりする余裕を失っている、と言えるでしょう。確実に彼らの将来の可能性を狭めていることに関して、誰かが心配しているうちは、真剣には悩まないものです)
だからこそ、まずは、彼ら彼女らに「それで本当に良いのか」を考えてもらっていく、というプロセスがどうしても必要であると思っています。

さて、ということで前置き(!)が終わって本題に入ろうとしたのですが、長くなりすぎました。また続きは明日にでも書こうと思います。
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