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嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

何を捨てるか。

それについて考えることがもはや考えるべき対象について考えることを逸らすだけではなく、考えるべき対象について考えていない自分を肯定することにもつながってしまうがゆえにそれについて考えていてはいけないもの、というものが世の中にはあります。

というより、結局そのように「考えなければならないもの」を新たにどんどん作っていくことで、もっと我々が生きることの根幹と繋がっている考えなければならないものから目を逸らさせようとするのが、現代社会であるとさえ言えるでしょう。

だからこそ、現代社会において必要なのは「何についても考える」という姿勢ではなく、「何については考えないか」という取捨選択であると思います。

本当に考えるべきものについてのみ、考える。それ以外のものについては世の中の多くの人がそれについて考えたり、口の端にのぼらせているものについては極力無視する。これがとても大切です。

しかし、これを実際にやろうとするとこの前提を共有できていない人たちには、どのように伝えるのかが極めて難しくなります。「テレビでこれだけ大騒ぎしてるから…」「ネットで…」「会社で…」「学校で…」
などと、その無駄なものについて悩むことを正当化する理屈はいくらでもつけられるだけでなく、それについて語ったり考えたりしないことは他人と違うという意味で(右へ倣えの日本人にとっては)恐怖心を覚えさえするからです。

以上はまあ明日発表の新元号についての話ではあるのですが、これと似たような失敗は勉強においても多いようです。

たとえば、公立中で行う単語テスト。春休み明けは公立中では単語テストをどこでもやらせるらしく、宿題を出さない代わりに単語を覚えてきてね、と言われます。すると、「学校の勉強さえちゃんとやっていれば大丈夫!」(本当はまったくそうではないわけですが)と信じている親御さんや中学生は単語テストの勉強ばかりしたがります。

春休みは2週間、今からだって1週間あります。その時間があれば、仮に英語に話を絞ったとしても単語の練習だけひたすらやるなど愚かな話で、そんなのは一日30分でいいから、英文法の予習復習をやった方がはるかに力がつきます。
あるいは英語以外の教科、数学や国文法など鍛えることは山ほどあるわけで、春休みの貴重な勉強時間を英単語の練習のみに充てるなど、時間の無駄遣いである以上、狂気の沙汰です。

しかし、「学校で言われたこと」をこなすことが勉強だと考え、それだけやることが勉強だ、と信じ込んでいる子や親御さんではどうしてもこればかりをやらせることになります。それをこちらで必死に説得しても、学校の言うことにさえ従っていればいい、と思っている中学生をその洗脳から目を覚まさせるのは本当に難しいことです。

このような失敗を生み出すのであれば学校は春休み明けに英単語テストをやらないほうが、はるかに学習効果が高くなるわけです。この点でも学校の先生の「年度替わりで宿題出せないし…単語テストでもするか!」程度の思いつきが、結局それを疑うことを知らない中学生の貴重な勉強時間を奪っていくことになります(もちろん、これはそれを疑わない中学生や親御さんにも問題があるわけですが、しかしそれを疑う力を中学生本人はもちろん、親御さんでも身につけるのはなかなか難しいと思います。)。

だからこそ、何をやるかではなく、何を捨てるか、こそが重要です。

やるべきこことの取捨選択に関しては特に東京では二極化していて、「(大学であれ高校であれ)受験をにらんで準備をしていくことが大切で、学校の勉強はその付属物にすぎない。」という正しい認識を持てるご家庭と、「学校の成績をとることがまず大切でそれさえとっていれば受験もなんとかなる。」という誤った認識に陥っているご家庭との情報格差があまりにも大きいと思っています。

そして、そのご家庭での情報格差がさらにお子さんの学力の差につながっていき、前者は力をつけ、後者は学校の成績もとれないままに、受験には為す術もない、という悲惨な事態に陥っていきます。

塾ではそのような将来が見えるからこそ、全力で説明して説得をするのですが、結局聞いてもらえず、というケースが多いです。

だからこそ、何を捨てるか、についてもっと真剣に考えてもらう機会を作っていくことが大切で、「とりあえず学校の言うとおり勉強していればいい」といった思考停止こそが、一番お子さんにとっては有害でしかない、と思っています。
それとともに、学校の先生にはそれだけ盲信しているご家庭が多いのだから、もっと正確な方向付けをできるように努力をしていただきたいとも思うのですが…。

ともあれ、こちらでも信じてもらえなくても本当のことを話し続けるとともに、どうしたらそれが伝わるのかについても
必死に模索し続けていきたいと思います。
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