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嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

知らないものを味わおう。

どくんごを見るようになって、テント芝居の奥深さにすっかりハマり、去年はマタヒバチも彩星学舎も見てきて、知れば知るほど、本当にとてつもない奥深い世界と、それを作り出している皆さんの熱意に頭が下がるばかりです。とてつもなく高いクオリティのものを、ただ自分たちがやりたい!という思いで徹底的に作り込むだけでなく、それがしっかりとファンを掴んでいる。これはもちろんテント芝居にかぎらず、様々なこのようなものがこの社会にはあると思うのですが、凄まじい努力と工夫をしてとてつもないクオリティのものを作りながらも、それが大多数の人たちには認知されていない世界というのがあるのだなあと、改めて教えられています。

来年は東京オリンピックがあるわけですが、東京オリンピックであれ大坂万博であれ、そのような既存の権威を誘致することでできる振興策、というのは実は手垢がついていて費用も膨大にかかる上に、大した成果は生み出せないようにも思います。それよりも、現在のこの日本で歯を食いしばって必死にとてつもないクオリティのものを作り出している人たちは芸術家であれ、職人であれ、(多くの人に知られてはいないとしても)様々な形で存在しているわけで、その人達を支援したりせめて足を引っ張らないような政策がとれるといいとは思うのですが…。現実は真逆であるようにも思います。

こういうと「今の政権が悪い!」という気持ちになってしまうかもしれません。もちろん森友学園の事件でわかるように、自分たちの依怙贔屓を隠し切るために公文書まで改ざんする政府が発表する「景気回復」がいかに怪しいものであるかは今回の厚労省の毎月勤労統計の偽装でもよくわかるとは思います。公文書や統計は国の根幹である以上、そこに手を加えるというのは既にもう近代国家としての基盤を掘り崩す方向へと我々が来てしまっている、ということでもあるわけで、現在の政権が政治的公正さの観点で言えば、大きな問題を抱えていることは明らかではあると思います。

一方で、「オリンピック!」「万博!」という盛大な旗振りの前に、とてつもないクオリティを草の根で維持している様々な人々の活動を踏みにじることになってしまっているのは、何も現在の政権だけのせいではなく、私達自身の中に内在している「知らないものを知ろうとしない」という愚かさの現れであるのだと思います。そもそも、そのような盛大な旗振りに踊らされやすいのは戦前からずっと続いている我々自身の愚かさでもあります。一様な価値観の中で、序列を比べることだけに終始しては価値判断をしてしまったり、「自分たちが見逃している素晴らしいものがこの社会には必ずまだあるはずだ!」とは思えずに「自分たちが知らないということはきっと大したものではないのだろう。」と傲慢にも思ってしまったりする私達自身の愚かさを反省し、そのような失敗を自分たちが犯しやすいことに注意深くなければならないと思います。

これはまた、インターネットの発達で情報化社会が進めば進むほどに、「(私が)知らないということはそれが大切ではないからだ。」という先入観が強くなってしまっているというところもあると思います。例えばラーメン屋さんで言えば(たとえが全てラーメンですみません。。)、今や食べログやその他ラーメンデータベース、その他様々なレビューサイトがあるからこそ、そこに載っていない、あるいはそこでの評価が低いものはあたかも存在しない、あるいはそのようなサイトに載っているお店よりは劣っているかのごとく思われる、という減少があると思います。しかし、知られていない名店があるように、大多数の人にとっては知られていない世界で、とてつもない努力でとてつもないクオリティの創作や仕事をしている方々は多々いるわけで、その可能性を自分が知らないという理由で否定することは愚かです。これは、単に素晴らしいものと出会えずにその人が損する、という以上に(オリンピックや万博的な動かし方以外の施策をとりにくくさせていくという点で)この社会の基盤を掘り崩すようなことにつながってしまうのではないかと思っています。

私達が目の前の知らないものに対して、自分の頭と心とをフル稼働してそれをしっかりと吟味する、ということをサボっては既存のレビューに頼れば頼るほどに、そのような行動をとる私達が生きる社会は、的はずれなもので動員しようとしては、多くの無駄と素晴らしいものへの犠牲を生んでいくような社会になっていってしまうのだと思います。その点では、私達自身がサボらずに、目の前の異質なもの、自分の知らないものをしっかりと考え、感じて受け止めていくことがとても大切だと思っています。もちろん、これはそのような可能性を考えずに頭でっかちに判断していた自分自身への自戒を込めて、そう思っています。
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