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嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

「BIG4」はなぜ「BIG3」ではないのか。マレー引退について。

毎日ブログを書いていると、生徒が後で読んでくれて、塾で話したことの意味を再確認してもらえるのは有難いです!
まあ、こんな長い文章ばかり毎日書いているとあやしい塾だと思われて、生徒が来なくなる可能性もあるのですが…あやしくないです!(と言うから、あやしくなりますね。)

全豪オープンテニスでの大坂なおみ選手の優勝は快挙でした!また、錦織選手もキッチリとベスト8に入り、特に4回戦のPCB(パブロ・カレーニョブスタ)戦は2セットダウンと第3セットも1ブレイクダウンからの大逆転劇で、本当にすごいものを見せてもらいました!プロテニスツアーというのは男子も女子も異常なまでの過酷さで一年間続けられるわけですが、その中でトップレベルを安定して維持し続けるということの凄み、というのを両者とも見せてくれたように思います。

個人的には今年の全豪オープンはアンディ・マレーの引退発表が本当に胸に迫るものがありました。これには、テニスファン以外の方には少し説明がいるかもしれません。

現在の男子テニス界というのは、歴史上最もハイレベルな争いが続いているのは間違いのないことです。グランドスラム優勝回数(テニス界で最高のグレードの大会で年間に全豪、全仏、全英、全米と4つあります)でも歴代のランキングでフェデラー(1位、20回)、ナダル(2位、17回)、ジョコビッチ(3位タイ、14回)とまさに歴代の中での最高の3人が同時代に存在してしのぎを削っているわけです。(今回の全豪オープンも決勝はジョコビッチVSナダルです。)その中でマレーはグランドスラム優勝回数では3回と、もちろんこれは現役選手の中ではこの3人に次ぐ成績ではあるのですが、しかし3人とは大きく水を開けられています。

それでも、マレーを含めて彼ら4人は敬意をもってテニスファンからは「BIG4」と呼ばれます。これにはテニスファンの中でも賛否両論のあるところです。他の3人は文句なくプロテニス史に残る名選手であることは間違いがないとしても、マレーは記録の面では大きく水を開けられている以上、そのくくりにマレーを入れるのは我々の「現在性」というバイアスの入った呼称なのではないか、というその疑いは最もなことです。

しかし、僕はこの「BIG4」という呼称はこうでなければならなかったと思っています。このように歴史上に記録としても間違いなく残る偉大な選手が同時に3人もいる中で、マレーはこの3人以外の選手を圧倒しながら常に勝ち上がり、そしてこの3人には負けることが多かったとしてもなお、互角に戦い、果敢に挑み続けました。ときには準優勝ばかりで「お皿コレクター」(優勝者はカップ、準優勝者はお皿をもらうのがグランドスラム大会です)と揶揄されながらも、マレーは果敢に戦い続けました。他のどのトップ選手を圧倒して勝ち上がってもなお、この3人にはどうしても勝てない。それでも諦めずに必死に最善を尽くし続け、戦い続けるその不屈の姿に、我々テニスファンは心打たれ、敬意を込めてマレーをも含めて「BIG4」と呼んだのでした。マレーが初めて世界ランク1位になったのは29歳のときで、これは史上2番目に高齢での、初めての世界1位でした。

形にならないものに形を与えることが言葉の最も大切な役割であるのだとしたら、記録には残り得ないマレーのとてつもない努力と勇気に、彼を同時代の偉大なチャンピョンたちと並べて「BIG4」と呼んだこの名称は、極めて有意義なものであったのだと思います。フェデラー、ナダル、ジョコビッチの3人を「BIG3」と呼ぶのは事実の記述であり、そこにマレーを加えて「BIG4」と呼ぶのは、形にならないものに何とか形を与えたいという意志を込めた言葉の使い方です。僕はこのような意志を込めた言葉の使われ方に、最大限の敬意を払わなければならないと思います。


(マレーは「彼ら(フェデラー、ナダル、ジョコビッチ)がいなければ、もっと勝てただろう。
      しかし、彼らがいなければ、ここまで強くなれただろうか。」

という名言も残しています。この言葉からも彼の素晴らしい人間性が伺えます。置かれた状況や時代のせい、あるいは自分の天与の才能の限界のせいにしては、それ以上の努力を怠りがちな我々にとって、この言葉は重く響きます。)

そして、その不屈の男マレーが、どうにもならない怪我のせいでその3人よりも先に引退を決意しなければならないことになりました。そのことの重みが、この文章で少しでも伝えられたら本望です。その残酷な現実に我々テニスファンも打ちのめされるとともに、しかし彼のこれまで見せてくれたその果敢な姿を決して忘れないようにしたいと思いますし、比べるべくもない卑小な自分自身も、どのような挫折や失敗の連続にもなお、諦めないで頑張っていきたいと思います。
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