嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

全てを終えた後に。

今年度の受験も国公立前期の発表、後期試験も終えて残りは後期の発表だけとなりました。今年も様々な受験生が必死に勉強し、周囲から見たら「奇跡的」と言われるような合格を残していきました(もちろんそれは周囲から見ての話です一年間の彼ら、彼女らの努力を見れば、一年前はどうであろうと、それらの結果はむしろ当たり前のことです)。また、残念ながら第一志望への合格、という結果が残せなかった子達も一年間必死に努力し、力がついたこと、さらにはその力が第一志望でなくても別の学校では結果として残ったことなど、必ず得たものがあるはずです。

と、どのように美しくまとめようとしても、僕には苦い思いが残ります。今年、一番頑張っていた受験生を落としてしまったからです。

もちろん、受験生を「合格させる」「落とす」というのは教師の側の傲慢な考えで、ほとんどの場合「○○先生のおかげで合格できました!」というリップサービスをいかに生徒達が気を利かして、合格体験記で書いてくれようと、その生徒が合格できるかどうかは純粋に本人の努力次第であるわけです。教師がそこに関われる割合など、本当に小さいし、逆にそのことがよく分かっている教師こそが良い教師です。それを「おれが通した!」だの平気で言うのは詐欺師かペテン師です(もちろんそのような詐欺やペテンもまた教育の一環として
それなりの効果を持つことは僕も認めます。プラセボ(偽薬)効果ですよね。しかし、人間は自身が偽薬でしかないことは認めたくないものです。そして、偽薬が自身が偽薬であることを忘れてしまえば、むしろ害の方が大きくなります。)。

しかし、彼が塾に通ってくれたこの2年間は、彼が合格し、この社会の中で再びその力量を発揮することだけをとにかく願い、そのための環境を整えようと必死にやってきました。それくらいに彼の努力と才能、人格をこの社会が見落としていることは、僕は本当にもったいないことでしかないと思いました。彼が2年前に塾に初めて来たときから、「この才能を社会の中で活躍できるように出来るか、それとも埋もれたままにしてしまうかは、ただ一人僕の努力にかかっているのだ。」と思ってきたのに、しかし、それがかなえられませんでした。

どの塾生も、彼と机を並べ、彼の驚嘆すべき努力にinspireされ、彼よりもはるかに恵まれた境遇であるのに
努力を怠る自分を情けないと思い、彼の優しさに励まされ、努力し続けました。その意味で、彼が合格できず、
塾を離れることは塾にとっても大きな柱を失うことでした。

不合格となった今でも、自信をもって保証できます。彼が超一流の人間であること、僕が今までに出会ってきた中で最も賢い人々の中の一人であることを(てるよし君谷口君達のように。)。その上で、彼の努力と才能が再び社会の中で活躍するそのときまで、引き続き応援し、支援し続けていきたいし、直接それが無理でもその支援をする準備を進めていきたいと思っています。

さて。たくさんのお問い合わせや入塾希望を頂いていますが、嚮心塾は、このように力が足りなく、不完全な塾です。勉強していない生徒を魔法のように合格させることができないことは当然としても、誰よりも必死に勉強した生徒を確実に合格させることも、完璧には出来ていません。しかし、ただ一つお約束できるのは、僕はこの痛みに決して慣れることはない、ということです。必死に努力している生徒が不合格になるくらいなら、僕の全存在をかけてそれを避けるための方策を考え、そこを鍛えていくためのスキルを少しでも向上させていきたい。伝わらない言葉を伝えられるようにしたい。既に十何年か教えてきましたが、この先何十年教えようとも、必死に努力する受験生を見殺しにしてしまわないために、もがき続け、もっと力をつけていきたいと思います。

人間が、自らの不完全さを認識して乗り越えようとする姿にこそ、humanityの最も美しい姿があると思います。
あるいは他者のその姿を目の前にしたときに心動かされ、自分自身も努力をしなければならないと思うところにもまた。そのような努力を鍛えていく場にもっともっとできるように、僕自身、もっとしっかりと頑張っていきたいと思います。
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