
東京すくすくさんの取材記事で、「この長期休校の間に教科書を使って自学自習を!」という趣旨を主張しました。
以下に答えきれなかったことをいくつか書いていきながら、自学自習に何が必要であるのか、という理解の支えにできたらと思います。
まず、自学自習において、なぜ数多ある参考書や問題集ではなく、教科書学習を薦めるのか、についてです。その主張の根拠をいくつか挙げていきたいと思います。
①「解く」よりも「読んで理解する」ことができる。
どのような勉強も、まずは理解することが大切です。理解をしていない状態のままで定理や公式だけをムリヤリ覚えておいて、問題を解くという勉強をしても、できたつもりになってもすぐに忘れてしまいます。なので、「問題を解く」というのは実は「ある程度理解をする」というプロセスをしっかりと経た上で、とりかかるべき作業であるのです。
ただ、これに関してはほとんどの学校では「先生が講義をした」=「生徒が理解した」というように、仮に見なしてしまってどんどん進んでいくので、高校生の大半は教科書の内容が理解できていないままにどんどん授業が進んでいきます。「いやいや。うちは進学校だし!」と思っておられる進学校の先生方も多いのですが、たとえば高校受験の偏差値で70オーバーの高校に通う高校生であっても、教科書の理解度、と言えばおそらく隅々まで理解している高校生は(教えている体感では)せいぜい3割〜4割くらいではないでしょうか。
逆に言えば、大学受験においてはそれほど「高校の教科書を網羅する」ということはハードルが高いのです。「教科書の隅々まで理解する」ということさえできていれば、それだけで受験勉強の下地どころか、よほど難しい大学以外にはそれで合格ができてしまう、と言っても過言ではありません。
そして理解することのためには、まず「読む」ことが何より大切です。一度では内容のわからないことを繰り返し読む。意味を調べる。こうした読む作業をじっくりとやっていき、理解を固めて行ければ行くほどに、問題を解くことの学習効果が高まります。逆に言えば、そのように隅々まで理解するまでは、「解く」ことは理解に邪魔である場合もある、とさえ言えるでしょう。(もちろん実際には「読む」→「解く」の時間配分については各科目によって、あるいはその子の得意不得意によって、変えていかねばなりません。しかし、今の小中高生が一般に「読む」のプロセスが大きく欠けていて、そこを補うだけでもかなり勉強の力がつく、ということは事実です。)
②分厚い参考書は、読みきらない。
でも、教科書ってそっけないし、わかりやすくないですよね。。だったら、「読む」系の参考書のほうがよっぽどよいのではないか!というのは正しい疑問です。しかし、教科書の一番の利点は「薄い」ということです。わかりやすく説明をしようとすればするほどに、ページ数はかさんでいきます。そうなればなるほどに、「何回も読んで理解する」ということが難しくなってきます。それに引き換え、教科書は最低限かつ十分なことをまとめたものです。だからこそ、(分量という面では)「読む」作業に挫折しない可能性が高いのです。この点で、教科書はかなりお薦めです。
③どの参考書が素晴らしいかは、わからない。
もちろん、だからといって「教科書はどんな参考書にもまさる!」というつもりはありません。もちろん素晴らしい参考書もあるでしょう。しかし、そもそも小中高生にとって「どれが素晴らしい参考書か」という情報を得ることが極めて難しいのです。さらに、「この参考書が素晴らしい!」という情報をネットや先輩その他から得たとして、その参考書が本当に自分自身にとっても素晴らしい参考書になるかどうかは、実は全くわかりません。これは同じレベルの志望校を目指して勉強するとしても、一人一人の弱点や強いところは全く違うので、本当に「1000人いれば1000通りの勉強法がある」からです。だからこそある人にとっての「素晴らしい参考書」が、別の人にとって素晴らしい参考書は正直やってみなければ、わかりません。
じゃあ何をやればいい?
教科書!
であるのです。教科書は受験勉強に置いては「ストライクゾーン」を定義するものです。
だからこそ、その「ストライクゾーン」の中で理解できていないところがあれば、それを潰していくことは最も効率の良い勉強であるだけでなく、そのような「素晴らしい参考書」を進めていくために自分に足りなかった要素を埋める手助けにもなります。
④手に入りやすい。(安いor無料。かつ全国どこでも手に入る)
最後の利点としては全国どこでも手に入る、かつ絶版その他の恐れもない、さらには安いor無料ということで、
非常に使い勝手がよい、ということもあります。
これらの利点から、教科書学習はかなりお薦めです。実際に嚮心塾でも(特に数学は)教科書を中心に読み進めて、解き進める、という指導を徹底しています。もちろん、難易度の高い大学を受ける場合にはこれだけでは当然足りません。しかし、このレベルで穴があるままに難しい問題集をやることほど、時間の無駄はないとも思います。
教科書学習の欠点として考えられるのは、
(1)答・解説がない。
まずはこれでしょう。もちろん高額な教科書ガイドも売っているわけですが、そういったものに頼らないとすると、解答・解説がないことがネックになります。
しかし、これに関してはたとえば
「読んで理解する→解答・解説のある例題だけ解く」でも十分です。そもそも教科書学習は理解するためであり、問題演習をするためではありません。教科書の説明がしっかりわかり、例題がスムーズに解ければ、あとは教科書の中の解答・解説のない問題を解くことなく、問題集に移行すれば良い話です。
(あるいは数学に置いてはたとえば数研出版の『体系数学』シリーズのように、教科書と同内容のものを解答付きの市販本として売っている教科書もあります。それを使うのも手です。)
(2)問題数が少ない。
これに関しては教科書が終わり次第、問題集に移行すれば十分です。
(3)説明がとっつきにくい。わかりにくい。
おそらくここが一番ひっかかるポイントだと思うのですが、これに関して教える立場としては、この「教科書はわかりにくい」という説にはだいぶ疑問を抱いています。たとえば一周読んだときのわかりやすさ、ということで言えば断然参考書です。
ただ、繰り返し読み直したり、解き直したり、というプロセスを経て、「それでも教科書だと全然理解できなくて!」というままに終わる小中高生はあまりいないように思います。ここに関しては、使い方の問題もかなり大きいとは思っています(もちろんそれでもわかりにくい、あるいはそもそも説明を省略しているところはあります。そういったものは参考書で、ですね。)。
といったところでしょうか。限られた紙幅では「『オンライン教育!』という趨勢への逆張りなだけじゃない?」とも
読めてしまうとは思うのですが、一人一人にあった自学自習スタイルを15年間試行錯誤してきた中での一つの結論として「教科書学習はかなり効果的である。」は是非広く皆さんにお伝えしたいところであると思っています。
(と、ここまでは主に数学について念頭に置いて書いてきたのですが、数学・理科・社会に関してはこれが当てはまるものの、英語に関しては少し違います。これに関しては次回補足した記事を書きたいと思います。)
以下に答えきれなかったことをいくつか書いていきながら、自学自習に何が必要であるのか、という理解の支えにできたらと思います。
まず、自学自習において、なぜ数多ある参考書や問題集ではなく、教科書学習を薦めるのか、についてです。その主張の根拠をいくつか挙げていきたいと思います。
①「解く」よりも「読んで理解する」ことができる。
どのような勉強も、まずは理解することが大切です。理解をしていない状態のままで定理や公式だけをムリヤリ覚えておいて、問題を解くという勉強をしても、できたつもりになってもすぐに忘れてしまいます。なので、「問題を解く」というのは実は「ある程度理解をする」というプロセスをしっかりと経た上で、とりかかるべき作業であるのです。
ただ、これに関してはほとんどの学校では「先生が講義をした」=「生徒が理解した」というように、仮に見なしてしまってどんどん進んでいくので、高校生の大半は教科書の内容が理解できていないままにどんどん授業が進んでいきます。「いやいや。うちは進学校だし!」と思っておられる進学校の先生方も多いのですが、たとえば高校受験の偏差値で70オーバーの高校に通う高校生であっても、教科書の理解度、と言えばおそらく隅々まで理解している高校生は(教えている体感では)せいぜい3割〜4割くらいではないでしょうか。
逆に言えば、大学受験においてはそれほど「高校の教科書を網羅する」ということはハードルが高いのです。「教科書の隅々まで理解する」ということさえできていれば、それだけで受験勉強の下地どころか、よほど難しい大学以外にはそれで合格ができてしまう、と言っても過言ではありません。
そして理解することのためには、まず「読む」ことが何より大切です。一度では内容のわからないことを繰り返し読む。意味を調べる。こうした読む作業をじっくりとやっていき、理解を固めて行ければ行くほどに、問題を解くことの学習効果が高まります。逆に言えば、そのように隅々まで理解するまでは、「解く」ことは理解に邪魔である場合もある、とさえ言えるでしょう。(もちろん実際には「読む」→「解く」の時間配分については各科目によって、あるいはその子の得意不得意によって、変えていかねばなりません。しかし、今の小中高生が一般に「読む」のプロセスが大きく欠けていて、そこを補うだけでもかなり勉強の力がつく、ということは事実です。)
②分厚い参考書は、読みきらない。
でも、教科書ってそっけないし、わかりやすくないですよね。。だったら、「読む」系の参考書のほうがよっぽどよいのではないか!というのは正しい疑問です。しかし、教科書の一番の利点は「薄い」ということです。わかりやすく説明をしようとすればするほどに、ページ数はかさんでいきます。そうなればなるほどに、「何回も読んで理解する」ということが難しくなってきます。それに引き換え、教科書は最低限かつ十分なことをまとめたものです。だからこそ、(分量という面では)「読む」作業に挫折しない可能性が高いのです。この点で、教科書はかなりお薦めです。
③どの参考書が素晴らしいかは、わからない。
もちろん、だからといって「教科書はどんな参考書にもまさる!」というつもりはありません。もちろん素晴らしい参考書もあるでしょう。しかし、そもそも小中高生にとって「どれが素晴らしい参考書か」という情報を得ることが極めて難しいのです。さらに、「この参考書が素晴らしい!」という情報をネットや先輩その他から得たとして、その参考書が本当に自分自身にとっても素晴らしい参考書になるかどうかは、実は全くわかりません。これは同じレベルの志望校を目指して勉強するとしても、一人一人の弱点や強いところは全く違うので、本当に「1000人いれば1000通りの勉強法がある」からです。だからこそある人にとっての「素晴らしい参考書」が、別の人にとって素晴らしい参考書は正直やってみなければ、わかりません。
じゃあ何をやればいい?
教科書!
であるのです。教科書は受験勉強に置いては「ストライクゾーン」を定義するものです。
だからこそ、その「ストライクゾーン」の中で理解できていないところがあれば、それを潰していくことは最も効率の良い勉強であるだけでなく、そのような「素晴らしい参考書」を進めていくために自分に足りなかった要素を埋める手助けにもなります。
④手に入りやすい。(安いor無料。かつ全国どこでも手に入る)
最後の利点としては全国どこでも手に入る、かつ絶版その他の恐れもない、さらには安いor無料ということで、
非常に使い勝手がよい、ということもあります。
これらの利点から、教科書学習はかなりお薦めです。実際に嚮心塾でも(特に数学は)教科書を中心に読み進めて、解き進める、という指導を徹底しています。もちろん、難易度の高い大学を受ける場合にはこれだけでは当然足りません。しかし、このレベルで穴があるままに難しい問題集をやることほど、時間の無駄はないとも思います。
教科書学習の欠点として考えられるのは、
(1)答・解説がない。
まずはこれでしょう。もちろん高額な教科書ガイドも売っているわけですが、そういったものに頼らないとすると、解答・解説がないことがネックになります。
しかし、これに関してはたとえば
「読んで理解する→解答・解説のある例題だけ解く」でも十分です。そもそも教科書学習は理解するためであり、問題演習をするためではありません。教科書の説明がしっかりわかり、例題がスムーズに解ければ、あとは教科書の中の解答・解説のない問題を解くことなく、問題集に移行すれば良い話です。
(あるいは数学に置いてはたとえば数研出版の『体系数学』シリーズのように、教科書と同内容のものを解答付きの市販本として売っている教科書もあります。それを使うのも手です。)
(2)問題数が少ない。
これに関しては教科書が終わり次第、問題集に移行すれば十分です。
(3)説明がとっつきにくい。わかりにくい。
おそらくここが一番ひっかかるポイントだと思うのですが、これに関して教える立場としては、この「教科書はわかりにくい」という説にはだいぶ疑問を抱いています。たとえば一周読んだときのわかりやすさ、ということで言えば断然参考書です。
ただ、繰り返し読み直したり、解き直したり、というプロセスを経て、「それでも教科書だと全然理解できなくて!」というままに終わる小中高生はあまりいないように思います。ここに関しては、使い方の問題もかなり大きいとは思っています(もちろんそれでもわかりにくい、あるいはそもそも説明を省略しているところはあります。そういったものは参考書で、ですね。)。
といったところでしょうか。限られた紙幅では「『オンライン教育!』という趨勢への逆張りなだけじゃない?」とも
読めてしまうとは思うのですが、一人一人にあった自学自習スタイルを15年間試行錯誤してきた中での一つの結論として「教科書学習はかなり効果的である。」は是非広く皆さんにお伝えしたいところであると思っています。
(と、ここまでは主に数学について念頭に置いて書いてきたのですが、数学・理科・社会に関してはこれが当てはまるものの、英語に関しては少し違います。これに関しては次回補足した記事を書きたいと思います。)



