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嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

責任を、感じよう。

 今年は、入塾の問い合わせが非常に多く、その対応に追われていて、広告も遅くなりまして、すみませんでした。おかげさまで嚮心塾も大分認知されてきて、本当に有り難い限りです。何だか学習塾っぽくなってきました(もちろん、開業当初から学習塾なわけですが)。
 問い合わせが多いと、様々なリクエストも頂き、「うちの子はここまで勉強をサボっていて、こんなひどい成績なのですが、しかしこれを何とか上げたい。つきましては、そちらの塾ではいつまでにどのように結果を出していただけるでしょうか。」的なことを聞かれる場合があります。このような親御さんからの質問に対して僕は、自分が教えることで出せる結果にどれほど自信があっても、「まあ、結局はご本人の意識と努力次第ですね。」と答えることにしています。というのは、その意識の共有がなければ、そもそもその子が力を付けていくことは不可能であるからです。
 もちろん、親御さんは安くないお月謝を払われる以上、効果を期待するのは当然のことです。また、受験業界は成果報酬ではないからこそ、「本人の意識と努力次第」という言葉に甘えては高い月謝をとりながらも何一つ生徒を鍛えず、少なくとも生徒の出した結果に責任も持たず、のうのうと金儲けに邁進する学習塾や予備校が世の中に多いことも、そのような懸念をもたれることを余儀なくさせています。そして、その不安を超えさせるために学習塾や予備校では「うちに任せていただければ大丈夫です!」と全く根拠のない自信をアピールするという異常な事態が起きてしまっています。
 しかし、そもそもその子が勉強が苦手になっているのは第一に本人のせいです。本人が努力が足りないから、そうなっているわけです。もちろん、勉強が苦手であるのが学校の教師や親御さんや今通っている塾のせいもあるかもしれません。しかし、その事態はまず第一に、本人が、社会の中で働いて生きていくためには必要とされる条件である受験勉強から目をそらし続けていった結果であるのです。(「これからの時代、学歴なんて無意味だ」ということはよく言われます。実際そうでしょう。しかし、それは「東大や京大を出たから何とかなる時代ではない。」ということです。勉強さえしていれば上に進学できる環境で、勉強をするだけのセルフコントロールもできない子は「学歴すら持っていない」と見られてしまいます。)
 自分自身の人生を自分の努力で切り開いていく覚悟がない子を、塾が劇的に鍛えることは不可能です。だからこそ、「今勉強が出来ていないのは、(学校の教師とか親とかこれまで通っていた塾の責任もあるけれども)、それ以上に何より自分の責任だ」という覚悟を、一人一人のお子さんがもつことが何よりも大切であると思います。そして、その覚悟があるかどうかで学習効果は格段に違ってきます。しかし、本人がそのような覚悟をもつきっかけを、塾に通うことで短期的な成果を求める親御さんの姿勢のせいで損なうこともまた多いことを、残念に思っています。(「これだけ払ったんだからさっさと成績を上げろ!」という親御さんの態度と「これだけ勉強したんだから成績上がるはず!」という子供達の態度とはきわめて似通っています。現在勉強において困っている状況にある以上、この瞬間どれだけやっているかではなく、3年間なり4年間なり、さぼった量を補えるほどの勉強量の蓄積を作れるかどうかが重要なわけです。「今回だけは勉強頑張った!」から、今までのさぼった勉強を帳消しにできるというムシのいい話は、特に勉強に関しては全く通用しません。)

 「頑張りたい気持ちはあるけれども、やり方がわからない。」とか「そもそもできないものが多すぎて、どれを先にやるべきかわからない」とか、「自分が頑張らねばという気持ちも折れてしまってはいるけれども、でもそういう自分を情けないと思い、何とか変わらねばならないとは思っている。」というのであれば、喜んでお力になりたいと思っていますし、必ずやお力になれると思います。「サボりたいわけではないけれども、やる気がなかなか湧かない」という悩みも大切です。そのような悩みには必ずや何かしら自分がどういう風に生きたいのかのヒントが隠れているからです。勉強をとにかく無理矢理やらせるのではなく、そのような複雑な気持ちを整理しては、厳しい現実に立ち向かうために準備していく手助けをする場というのも、塾の担うべき役割であると考えています。

 しかしその上で、本当に結果を出したければ、やはり今の状況を招いたのは第一に自分であるという事実から逃げずに、その責任を本人が感じなければなりません。お子さんも、親御さんも。
 もちろん、塾もです。僕がこのように、「自分のさぼってきた日々に責任を取ろう!」と促すのも塾としての責任を回避したい為ではなく、「今勉強が出来ないのは自分の責任だ。」という意識こそが何より自分を鍛えていくためには決定的に必要なのだと伝えることこそが、学習塾としての責任であると考えるからです。

 その意味では、政治と同じように自分の責任を各々が感じることが、事態を好転させていくためには必要なのだと思います。もちろん、それを誰も最初にはやりたがらないわけですが(火中の栗を拾いたくないのは誰でも同じです)、であれば、嚮心塾に押しつければよい。(最初とは矛盾するように聞こえますが)成績が上がらないのは全部塾のせいだと思って、塾で指示された努力をしていきましょう。それによって実力と自信がつき、少しは自分の情けなさを振り返ったり、反省したりしては、結局は自分の努力が必要だと気づける余裕を持てるようになれれば、そこからはしっかりと結果が出てきます。逆に、最初はよいとしてもいつまでも自分がうまくいかないことを他人のせいにしていると、それ以上全く成長が出来ません。去年の受験生も大変な状態から、今の自分の学力不足は自分が招いたものだと自覚した上でそれを埋めようと必死に頑張り、合格を勝ち取った子も多くいました。そのようなきっかけを欲しておられる方々に、是非来ていただきたいと考えております。
                              2013年3月25日 嚮心塾塾長 柳原浩紀

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2013受験を振り返って①

受験を振り返って2013
今年度の受験生に自分の受験を振り返って書いていただきました。

<大学入試>
千葉大学工学部都市環境システム学科合格(進学先)
中央大学理工学部
法政大学デザイン工学部、日本大学理工学部合格  W・A(桐朋女子卒)

この塾で過ごしていく上で一番大切なことは、いかに何でもさらけだすかということだと思います。何でも話せる人がいるというのは本当に大きなことです。家庭内で問題が起こり大変な時、こんな重たい話誰にもできないと思っていましたが、先生は嫌がらずに全部聞いてくれました。それだけでなく普通じゃ考えられないような支援もしてくれましたし、一緒に解決策を考えてくれました。全部が全部解決した訳ではないけれど、すべてを受け入れてくれる人がいたことは、私にとって本当に本当に大きな支えになり、なんとか毎日普通に生活することができました。先生には本当に感謝しています。
受験勉強をしていると、それだけがすべてで一番大事なことのように思えてきてしまいますが、ここで過ごしていると、受験勉強はこれから先、生きていく上での補助にすぎないということに気付かされます。
この塾は受験生という一瞬のことだけでなく、過去、現在そして未来の人生全体を通して自分がどう生きていくか、一緒に考えながら地道に勉強していける塾だと思います。すでに塾に通っている人も、これから入ろうか迷っている人も、是非先生に何でも打ち明けてみてください。ただ授業を受けているだけでは絶対に得ることができないものに気が付くことができるはずです。


<高校入試>
都立富士高校合格(進学先)
東京電機大付高校合格                    K・S(小金井市緑中)
僕が、この塾に入った理由は勉強に打ち込める環境を求めていたからです。大学受験生が黙々と勉強している姿を見ると、僕も勉強する気になりました。今まで勉強したことがなかった僕が高校に入れたのは、この環境のおかげです。
 また、指導は生徒一人一人を把握した上で進められ、焦ることなく勉強できました。勉強を進めていく内に勉強が楽しくなってきました(嫌ではなかったという感じ)。高校入学後も進んで勉強ができる気になりました。

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全てを終えた後に。

今年度の受験も国公立前期の発表、後期試験も終えて残りは後期の発表だけとなりました。今年も様々な受験生が必死に勉強し、周囲から見たら「奇跡的」と言われるような合格を残していきました(もちろんそれは周囲から見ての話です一年間の彼ら、彼女らの努力を見れば、一年前はどうであろうと、それらの結果はむしろ当たり前のことです)。また、残念ながら第一志望への合格、という結果が残せなかった子達も一年間必死に努力し、力がついたこと、さらにはその力が第一志望でなくても別の学校では結果として残ったことなど、必ず得たものがあるはずです。

と、どのように美しくまとめようとしても、僕には苦い思いが残ります。今年、一番頑張っていた受験生を落としてしまったからです。

もちろん、受験生を「合格させる」「落とす」というのは教師の側の傲慢な考えで、ほとんどの場合「○○先生のおかげで合格できました!」というリップサービスをいかに生徒達が気を利かして、合格体験記で書いてくれようと、その生徒が合格できるかどうかは純粋に本人の努力次第であるわけです。教師がそこに関われる割合など、本当に小さいし、逆にそのことがよく分かっている教師こそが良い教師です。それを「おれが通した!」だの平気で言うのは詐欺師かペテン師です(もちろんそのような詐欺やペテンもまた教育の一環として
それなりの効果を持つことは僕も認めます。プラセボ(偽薬)効果ですよね。しかし、人間は自身が偽薬でしかないことは認めたくないものです。そして、偽薬が自身が偽薬であることを忘れてしまえば、むしろ害の方が大きくなります。)。

しかし、彼が塾に通ってくれたこの2年間は、彼が合格し、この社会の中で再びその力量を発揮することだけをとにかく願い、そのための環境を整えようと必死にやってきました。それくらいに彼の努力と才能、人格をこの社会が見落としていることは、僕は本当にもったいないことでしかないと思いました。彼が2年前に塾に初めて来たときから、「この才能を社会の中で活躍できるように出来るか、それとも埋もれたままにしてしまうかは、ただ一人僕の努力にかかっているのだ。」と思ってきたのに、しかし、それがかなえられませんでした。

どの塾生も、彼と机を並べ、彼の驚嘆すべき努力にinspireされ、彼よりもはるかに恵まれた境遇であるのに
努力を怠る自分を情けないと思い、彼の優しさに励まされ、努力し続けました。その意味で、彼が合格できず、
塾を離れることは塾にとっても大きな柱を失うことでした。

不合格となった今でも、自信をもって保証できます。彼が超一流の人間であること、僕が今までに出会ってきた中で最も賢い人々の中の一人であることを(てるよし君谷口君達のように。)。その上で、彼の努力と才能が再び社会の中で活躍するそのときまで、引き続き応援し、支援し続けていきたいし、直接それが無理でもその支援をする準備を進めていきたいと思っています。

さて。たくさんのお問い合わせや入塾希望を頂いていますが、嚮心塾は、このように力が足りなく、不完全な塾です。勉強していない生徒を魔法のように合格させることができないことは当然としても、誰よりも必死に勉強した生徒を確実に合格させることも、完璧には出来ていません。しかし、ただ一つお約束できるのは、僕はこの痛みに決して慣れることはない、ということです。必死に努力している生徒が不合格になるくらいなら、僕の全存在をかけてそれを避けるための方策を考え、そこを鍛えていくためのスキルを少しでも向上させていきたい。伝わらない言葉を伝えられるようにしたい。既に十何年か教えてきましたが、この先何十年教えようとも、必死に努力する受験生を見殺しにしてしまわないために、もがき続け、もっと力をつけていきたいと思います。

人間が、自らの不完全さを認識して乗り越えようとする姿にこそ、humanityの最も美しい姿があると思います。
あるいは他者のその姿を目の前にしたときに心動かされ、自分自身も努力をしなければならないと思うところにもまた。そのような努力を鍛えていく場にもっともっとできるように、僕自身、もっとしっかりと頑張っていきたいと思います。

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2013年度合格状況(3月11日現在)

2013年度入試結果                 3月10日現在
<大学入試>
(国公立大学)
筑波大学生命環境学群生物学科     1名(進学先・第一志望)
千葉大学工学部都市環境システム学科  1名(進学先・第一志望)
(私立大学)
慶應大学文学部            1名(進学先・第一志望)
早稲田大学創造理工学部環境資源工学科 1名(進学先・第一志望)
東京経済大学経営学部         1名(進学先・第一志望)
東京家政大学家政学部服飾美術科    1名(進学先・第一志望)
明治大学文学部            2名(うち1名進学先)
武蔵野美術大学造形学部油絵学科    1名(進学先)
早稲田大学文学部           1名
早稲田大学文化構想学部        1名
早稲田大学教育学部          1名
学習院大学文学部           1名
上智大学理工学部           1名
中央大学理工学部           1名
法政大学デザイン工学部        1名
創価大学理工学部           1名
駒澤大学文学部            1名
日本大学理工学部           1名

<高校入試>
都立富士高              1名(進学先・第一志望)
東京電機大付高            1名

<中学入試>
西武学園文理中            1名

大学受験生16名(うち国公立受験者10名)、高校受験生1名、中学受験生2名での結果です(合格者数の人数は延べ人数です。)どの受験生のどの結果に対しても、彼ら、彼女らがこの一年を真剣に苦しみ抜いた結果ですので、合格であれ、不合格であれ、心から誇りに思っております。                      嚮心塾

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試行錯誤のはてに。

ご無沙汰しております。長く厳しかった受験シーズンもようやく大詰めを迎えています。
ここからの国公立前期試験の発表と後期試験をまつだけです。

今年の受験を終える前に、先にこれを書いておきたいと思いました。今年も様々な受験生を鍛え、その一人一人に様々に苦しみました。しかし、なかなか勉強に向き合えておらずに結果を出せていなかった一人の受験生が、最後になってかなり真剣に勉強し、しっかりと第一志望の大学に合格できたことはその中でも本当にうれしいことでした。

もちろん苦い思いもあります。その受験生をお預かりしたのは2年間という長い期間であったこと、その中でなかなかに結果が出せず、何度も本人と話し合ってはそれでもうまくいかなかったこと。もちろん受験した中では第一志望であったとしても、そもそも彼のポテンシャルからすればもっといくらでも勉強さえすればより難しい大学に行けたこと。後悔は尽きません。

しかし、それでも受験直前になって彼の目の色が変わったこと、今まで口を酸っぱくして言っていた基本的な勉強から積み重ねていくことの必要性がようやく本人にも理解できたことは、本当にうれしいことでした。

僕たちが一生懸命に生きようと、大きな声をだし、喉をからして叫ぼうと、他の人に影響を与えることができるなどと夢想するのはおこがましいことなのかもしれません。また、伝わったと感じたこの瞬間の喜びも所詮は錯覚で、いずれまたなにかに気づいてもらえたと思った相手もまたそんなことは忘れていきていくのかもしれません。しかし、それでも言わずにいられないし、叫ばずにはいられない。いや、言ったり叫んだりが定型的な愛情表現故にかえって生徒たちの心をかたくなに閉ざすしかないのであれば、言わずにいられなかったり、叫ばずにいられないことすらも自分の中で圧し殺し、少しずつオブラートに包みながら小出しに伝えていくしかない。自らの思いやりを徹底的に見殺しにされる覚悟をもてたと確信して、僕は教育という道を選んだつもりでした。しかし、教え続ける度に、自分のその最初の想定がいかに甘かったか。僕自身がどんなに相手に冷やされようと、相手を暖め続けることがどれだけ大変か、ということを思い知らされています。

今年もまた、様々な点でそれを思い知らされました。必死に教えたにも関わらず、悔いの残る受験をさせてしまった受験生もいます。しかし、冒頭にあげた受験生のように、少しでも何となく怠惰にすぎていく一人一人の人生に
楔をうつことができるのなら、僕はやはり、この仕事を続けていかなければならないのだと感じています。

塾というのは当然合格実績で判断されるものです。そのことは仕方のないことなのですが、この塾の本質は決して華やかな合格実績にはありません。合格していった彼らは、もちろん本人の努力と、適切な指導者がいればこの塾でなくても、誰かができたことだと思います。あるいは、勉強に向き合えない子を丹念に待ち続け、少しずつ鍛えることも、またどこかのよい塾ではやっていることでしょう。しかし、その両者が机を並べて勉強するという環境は、僕はこの塾以外にはなかなかないと思います。その両者が「机を並べて勉強した」ということの意味を塾生たちが気づけるようになるその日まで、細々とでもしっかりと塾を続けていきたいと思います。

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