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嚮心(きょうしん)塾日記

西荻窪にある、ちょっと変わった塾です。

難しい本の読み方

高校生以上の子達にお薦めしているのは、背伸びをして「古典」と呼ばれる本を何か読むことです。たとえば、世界史でも日本史でも倫理でも、その勉強の中で内容紹介などを読んで「読みたい」と思った本には、多少難しくてもチャレンジをすることが大切だと思います。しかし、そのチャレンジの仕方がわからなくて、途中で挫折してしまう場合も多いようです。そこで、難しい本の読み方として、

①わからない部分があるのは仕方がないと思って、わかる部分を探して読む。
②最後まで読み通す。
③書き込む。

という3点が大切だと思います。
①については、たとえば何かのテーマについて懸命に悩み抜いて生きた人が書き残した本を、僕らが片手間に読んでわかるわけがありません。これは高校生に限ったことではなく、たとえば僕自身今までに様々な本を読んできているつもりですが、まだまだ分からない部分が残る本がいっぱいあることに驚かされます。「専門家じゃないからわからない」のではなく、「専門家であってもわからない(意見が分かれる)」ものもまた、多々あるのです。これに関しては、僕たちは子供の頃から、子供向けの「わかる本」を与えられて育つ中で、中学生や高校生、あるいは大学生のある段階でいきなり「わからない本」を読むことを強要されるのがそもそも問題であると思います。「わからない本」を読むためには、わからないなりに、自分の思いに響くところを探していく、という姿勢がとても大切です。そのような読み方でも、いくつか残るフレーズを頼りに、自分の経験が深まり、「もしかしてあの本に書いてあったのは、このことかも!」と気付いたときに読み返せるとすばらしいと思います。
②わからないなりに最後まで読み通すことも大切です。①のような姿勢で読んでいったとしても、途中で止めてしまうと、その本自体が「苦い思い出」として残ってしまい、もう一度読み返すこと自体に心理的抵抗感が生まれてしまいます。逆に「一応全部読んだけど、わけがわからなかった。」という時には他のきっかけを通じて、「もう一度読んでみようかな。」と思えるものではないでしょうか。
③書き込むと、能動的に頭を使います。書き込む内容は分からない部分の言い換えでもいいですし、その文章の内容はわかったとしても、「だとしたらこういうことになるのでは?」と次に考えを進めたり、逆に「ここはこの本が間違っている!」とかでもよいです。この書き込みというのは、ニコニコ動画にコメントでつっこみをいれる感じ、というと、若い世代には分かりやすいようです。さらに、書き込んでおくと、二回目以降読み直すときには一回目の自分の読解を頼りに出来たり、逆に間違いに気付いたり、ということで二回目の理解度が格段に違うというメリットもあります。

以上のように、難しい本を読むときには、「わかる本」を読むときとは違う工夫が必要です。もちろん、上に書いたような工夫ですら、大変すぎてやる気が起こらないという人が多いかもしれません。しかし、僕は「(簡単には)わからない本を苦労して読む」ということは、ともすれば独善的になりやすい10代、20代、ひいては大人にとっても大切な自己省察の機会であると思います。自分はまだ何もわかっていないということを知るために、難しい本にチャレンジしてみることをこれからもお薦めしていきたいと思いますし、まずはその模範になれるように僕も努力していきたいと考えています。

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